こちらのページでは、絵本「給食番長」と、作者よしながこうたく氏について紹介していきます。
給食番長のあらすじ!
番長にそそのかされた1年2組は、給食を残してばかり。それを悲しんだ給食のおばちゃんたちはある日、「いえで」してしまいます。番長たちは代わりに給食を作ろうとしますが…!?
…というドキドキのストーリーのこの本。
最初は残しちまえ!とかいっちゃうやんちゃな番長ですが、給食がなく困ると、素直に反省。おばちゃんたちに謝り、和解します。
「残しちゃだめよ」といういわゆる食育的な本ですが、説教臭くなく楽しめるのは、それぞれのキャラクターが強く、その個性を前面に楽しめるからだと思います。裏表のない番長の行動には、子どもたちも読んでいて純粋に楽しめるはず。
「番長」中心に物語が展開していき、一緒に行動するまさお、せいじ、たかふみという脇を固める友だちキャラクターも出てきます。
そしてこの本の魅力は、なんといっても、勢いのあるのびのびとした絵と、いっぱいに描き込まれた紙面、アクロバティックな構図です。その画面は、このよしながこうたく氏ならではです。
給食番長が絵本デビュー作!よしながこうたく氏とは?
よしながこうたく氏は、1979年生まれの作家・イラストレーターです。
福岡県に生まれ、九州産業大学デザイン科を卒業。その後、雑誌やCDジャケットのイラストを手掛けるなどし、2007年にこの「給食番長」で絵本デビューをしました。現在はアーティストである兄・妹と事務所を設立し、福岡を拠点に活動されているようです。ご本人は絵本のほか個展や絵本の読み聞かせイベントを開いたりと、活動は多岐にわたります。
近年は地元福岡でお兄さんも注目されています。お兄さんに関してはこちらの記事を御覧ください。
給食番長がうまれるきっかけと子ども時代
幼いころは、毎朝畳の上でお経を読むなど、寺の子だった祖母や厳格な父に厳しく躾けられたそうです。虫や植物を採ってきては描き、小学生の頃はマンガの模写で友達を喜ばせていたとか。中学生の頃には絵でやっていくことを決め、デザイン科に進んだ大学時代には、個展を開くなどして、絵を描くことについて向き合ってきたそうです。しかし、現在のような人気絵本作家となるまでは順風満帆というわけでもなかったとか。
イラストレーターとして仕事を始めるも、絵画としてはイラスト扱いをされ、イラストとしては個性が強すぎると言われて苦しい時代もあったといいます。そんな中、新しく面白い若手作家を探していた出版社で、過去作品を見せていた中から、給食をキーワードに、小学校が舞台の「給食番長」を出版することに決まりました。しかし当初は「絵本じゃない」「絵が汚い」とも言われていたそう。しかし、子どもへ向けての作品を作り続けた結果、その後の快進撃がはじまったようです。
よしながこうたく氏の絵本の原点
よしなが氏の過去のインタビューを見ると、ある共通点があります。
絵本に対する思いのなかに、「子どもの振り幅を広げてあげたい」「ちょっと視野を広げるきっかけにもなるかなって」という言葉が出てきます。子どもが世界を広げるきっかけを作りたいという思いがあるようです。
それは、よしなが氏の経験からでてくるのではないでしょうか。よしなが氏は、父親がボランティアで南米に学校を建設するなどの活動をしていた関係で、ブラジルへ10代の頃から何度か訪れていたそうです。そのときに貧民街の暮らしなど、日本とはまったく違う現実を見てきたと語っています。その経験が、絵本作りに深くかかわっているのは想像にかたくありません。
自分とちがうしゃべり方をするやつもいるんだ、という世界をひろげることになる、という点で、「給食番長」のもうひとつの魅力である、語りの「博多弁バージョン」の併記にもつながっていきます。
博多弁の語りも同時掲載!”バイリンガル”絵本の魅力
この「給食番長」、各ぺージの片隅には、内容と丸々同じ意味の”博多語訳”が小さく載ってます。
標準語と博多弁のバイリンガルで楽しめちゃうんです。博多っ子はより身近に、それ以外の子は面白おかしく、絵本を楽しめます。ローカルで活動する作家だからこその挑戦も、入れこまれているのです。絵本としては”異端”とも見られたこの絵本、新たな絵本の楽しみ方も見せてくれるのではないでしょうか。
「給食番長」
- 作・絵:よしながこうたく
- 出版社:長崎出版(~2014)/好学社(2014~)
- 発行:2007年
【脇役】まさお(男)、せいじ(男)、たかふみ(男)
参考URL
リビング福岡 FUKUOKA PEOPLE よしながこうたくさん https://home.livingfk.com/content/people/564
mi:te 絵本作家インタビュー よしながこうたくさん https://mi-te.kumon.ne.jp/contents/article/12-63/
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