はじめてのおつかいーーそのタイトルのとおり、初めて行くおつかいのドキドキを描いた名作です。初出は1977年ですが40年近く愛され続けています。
かくいう私も幼い頃読んでいた一人です。この本は主人公の名前が「みいちゃん」といいますが、私の妹が「みいちゃん」だったので、と~っても羨ましかった思い出があります。その思い出からこの主人公の名前から絵本を検索できるようにしたと言っても過言ではありません。
では、私やわが子も大好きな本のひとつ「はじめてのおつかい」を解説します!
はじめてのおつかいのあらすじのネタバレ!
ある日、ママが言いました。「みいちゃん、ひとりでおつかいできるかしら?」。みいちゃんは飛び上がって答えました。「うん!みいちゃんもういつつだもん」。みいちゃんは「車に気を付けること、お釣りを忘れないこと」をママと約束し、牛乳を買いに出かけます。途中、友達のともちゃんに会い、おつかいに出かけることを告げると「ひとりで!?」とビックリしていました。
みいちゃんは坂についたところでかけあしすると転んでしまい、握っていたお金を手放してしまいます。足はじんじん痛みますが、みいちゃんはお金が心配ですぐに立ち上がりました。お金は無事見つかり、お店まで走ります。
お店へ着くと誰もいません。「ぎゅうにゅうください」。ドキドキしながら言いますが誰も出てきません。もう一度言いますが今度は車の音にかき消されました。そうこうしていると、おじさんの「たばこ!」とという声に、奥からおばさんが出てきて、タバコを渡します。みいちゃんは声をかけようとしますが、今度は「あのね、パンをくださいな」と大きなおばさんが入ってきて、おしゃべりを始めてしまいます。みいちゃんには二人とも気が付きません。
おばさんが帰ったところで、みいちゃんは「ぎゅうにゅうください!」と自分でもびっくりするくらい大きな声で言いました。お店のおばさんはやっと気が付き、牛乳を渡します。みいちゃんはホッとして涙が一粒落ちたのでした。お金を渡したみいちゃんは、牛乳を抱えて走り出します。
「ちょっとまって」とおばさんは追いかけてきました。みいちゃんは、おつりを受け取るのを忘れていました。おつりを受け取り、坂を下るとママが赤ちゃんと一緒に待っていたのでした。というお話。
「はじめてのおつかい」
- 作:筒井頼子
- 絵:林明子
- 出版:福音館書店
- 発行:1977年
【脇役】まま、あかちゃん、ともちゃん(男)、お店のおばさん、タバコを買うおじさん、パンを買うおばさん
感想は?
この「はじめてのおつかい」は、絵本ナビやアマゾンなど、評価サイトでは軒並み4.5以上の高評価です。子どもが読むと、主人公のみいちゃんと同じような気持ちになってドキドキハラハラするといいます。大人が読むと、みいちゃんの頑張りを見ていて心がふるえます。
小さな子でもこの本を読むと、真剣に聞き入ります。
ちなみに4人のわが子は割と小さいときから読んでいるのですが、改めて主な感想を聞いてみると…
私もおつかいしたいな。あと、この本、風景を見るのも面白いよ!
あーもうこのタバコのおじさんすっごく怖いからやだ!
「ぎゅうにゅうくださあい!」
…(真剣に聞いている)…。
8歳児は自分もおつかいしたい、自分なら…と自分に置き換えて考えていました。6歳児もそう。ハラハラドキドキを一緒に体験しているようです。4歳児は「ぎゅうにゅうください!」を真似していました。うちの子は読み聞かせのとき、たまにこのセリフを一緒になって読みます。自分がおつかいに行ったときのためにシュミレーションしているのでしょうか?絵本をまだ理解するのに難しいと思われるうちの2歳児も、いつになく真剣に見ていました。
絵探しも見どころ!
この絵本は、街並みも細かく描かれていて、掲示板に「さがしてください」と張り紙があった猫が別ページの町のなかで歩いていたり、インコが止まっている電線の近くに空の鳥かごを抱えた人がいる家があったり、絵探し絵本の要素もあります。子どもって、絵探し好きですよね。わが子は兄弟競うように、じっくり紙面を見つめています。
また、この主人公のみいちゃんの家は「尾藤三」と書かれています。「おとうさん」でしょうか。それとも「びとう みつ」というお名前でしょうか?話に描かれていないお父さんの登場?
こうしたことを親子で絵本をじっくり眺めながら話し合う第2ラウンドが、我が家では読み聞かせの第1ラウンドのあとにいつも始まります。
対象年齢は?
この本を出版する福音館書店の公式サイトでは、「読んであげるなら3才から、自分で読むなら小学低学年から」とあります。
割と長いお話なのですが、このお話は3歳頃でも飽きずに真剣に聞いてくれます。表情はドキドキしているのか神妙です。4歳のわが子に読んでいると、なぜか読んでいる私の表情をたまにチラッチラッと見てきました。
字が読めるなら、年長あたりから一人で読むこともできると思います。
「はじめてのおつかい」のねらいは?
この絵本は、「ひとりで何かを達成すること」を描いた作品だと思います。
現代では、5歳児がひとりでおつかいなんてまだまだ…というかもしれません。しかしこの絵本が今も愛され続けているのは、子どもの頑張りを臨場感たっぷりに描いているからだと思います。
「絵本」というと、割とのほほんとして、棚ぼた的にラッキーが舞い込んでくるお話も多いものです。しかしこの絵本は、自分で行動しないとお話が進みません。頑張っても、うまくいかないときもあるし怖いけど、主人子のみいちゃんはそれを乗り越えていきます。最初、ぎゅうにゅうください!と言っても、お店の人にはなかなか聞こえず、出てきませんでした。頑張るけど、おじさんやおばさんに先を越されます。それでもみいちゃんは頑張って、大きな声で「ぎゅうにゅうください!」とお店の人に伝えることができました。涙がポロンと一粒こぼれますが、これはホッとした涙。事を成し遂げたあとのうれし涙です。
また、お母さんとお釣りを忘れないことを約束しますが、みいちゃんはこれを失敗しています。これに関してはお店の大人の機転ですぐに解決しました。こうやって失敗を重ねながら、子どもは学んでいくのです。完璧におつかいをこなせたわけじゃないけれど、みいちゃんの頑張りを知っているから、おつかいを達成できたことを、子どもは素直に喜びます。
作者の筒井頼子さんいわく…
作者の筒井頼子さんは、絵本作家の長谷川摂子さんとの対談のなかで、
筒井さんの作品は、主人公はいつも、大人の保護なしに、つき放された形で登場してくるんですよね、という指摘に、「子どもに対して、母親としてではなく、幼かった子供の頃の自分を見ている」、と言います。
幼かった頃は自分のことが好きではなかったという筒井さん。大人になり「はじめてのおつかい」などの絵本で、ただただ子どもの行動を見つめる視点を描くことにより、自分の幼かった行動なども愛せるようになる、と述べていました。そういうプロセスがあることで物語に深みが出ているんでしょう、と分析されていました。
そのせいでしょうか。このはじめてのおつかいは、子どもだけではなく、大人の心をも打ちます。誰しもが主人公みいちゃんのなかに自分自身を重ね合わせているのかもしれませんね。
はじめてのおつかいに姉妹本がある!?
実はこの「はじめてのおつかい」には、同じ町を描いたであろう絵本が存在します。
それが、作・筒井頼子、絵・林明子の同じ二人のタッグによる二冊の絵本、
ひとつが「あさえとちいさいいもうと」
です。この本についてはコチラ!
もう一冊が「いもうとのにゅういん」
詳細は別ページ!
です。
この二冊は、あさえちゃんとあやちゃんという同じ姉妹のお話なのですが、絵本の絵をよく見てみると、みいちゃんや、「たばこ!」のおじさん、パンを買いに来たおばさんなどが画面に小さくですが登場するんです!
お話とともに、絵探しすると面白いですよね。「はじめてのおつかい」を読んだ後にはぜひ!
参考URL
福音館書店ふくふく本棚 長谷川摂子と絵本作家 第一回 筒井頼子https://www.fukuinkan.co.jp/blog/detail/?id=1
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