こちらのページでは、女優で絵本作家の室井滋さんの絵本「しげちゃん」と他の作品、そして絵本作りのきっかけについて紹介します。
室井滋さんとは…
テレビや映画、舞台で、様々な役を演じきる個性派として知られています。しかし、彼女の活動は幅広く、歌のCDを出したり、テレビのナレーター、また、エッセイストとしてなど、活動領域は一か所のそれにとどまりません!エッセイのデビュー作「むかつくぜ!」は100万部のベストセラーになり、その後も安定して20冊ほど出し、定評を得ています。また、子どもになじみ深いところでいうと、ディズニー映画「ファインディング・ドリー」のドリー役も、実は室井さんなんです!まさに才能の人、といったところでしょうか。
その彼女が近年、毎年のように行っていること、それが絵本づくりです。
絵本づくりのきっかけと絵の長谷川義史との出会い
絵本づくりのきっかけは、彼女が週刊文春に書いていた「すっぴん魂」というエッセイの挿絵を、今は絵本作家として知られる長谷川義史氏に頼んだところからはじまるそうです。
当時、まだ長谷川氏は絵本を描いてはおらず、900名くらい載ったイラストレーター名鑑から、室井さんが「この人の絵が好き!」と決めたそう。ただ、連載は12年続くも、その間直接会ったのは3回ほどだったとか。そして、「おとなしい、かわいらしい人だな」くらいにしか思っていなかったと室井さんは言います。
それが連載を終わるにあたって、室井さんが長谷川さんの個展に挨拶に行ったところ、12年の間に長谷川さんは絵本作家としてすっかり有名に。それにビックリしていると、金の星社の方に「絵本、お好きなんですか?書いてみませんか?」と誘われます。実はこの頃、室井さんは長年のエッセイも終わり、女優のお仕事も少しスランプ気味だったとか。「これから何をやっていこうかな」という時期だったときに、絵本のお話が舞い込んだそう。そこからのちのヒット作「しげちゃん」の出版につながるという不思議な縁ですね。
大ヒット絵本「しげちゃん」の誕生
室井滋さんのこどものときの体験がお話になっています。子ども心を一ページ一ページ丁寧に描写し、それに長谷川さんの絵がしっかりと応えてくれてる、傑作の一冊になっていると思います。主人公は「むろいしげる」のまま、出ています。
最後のあとがきには、現在の室井さんの「芸名をつけれるのにつけなかった」というエピソードも載っています。自分の名前に自信を持つまでの過程が、その一言で見えてくるようです。
「しげちゃん」
- 作:室井滋
- 絵:長谷川義史
- 出版社:金の星社
- 発行:2011年
【脇役】お母さん
絵本を書くにあたって、当初はネコやキツネの話を書いてもっていったものの、長すぎるということで却下され、「じいちゃんのしーびんびん」という尿瓶の話(!)も、「デビュー作ですよ?」ということで却下、その後結局、自分のお話を書いたのが「しげちゃん」だったそう。
ご自分のエピソードとして書かれたこの作品。室井さんのご両親は、小学校高学年の頃に離婚され、お父さんのほうに引き取られているそうなので、「しげちゃん」で描かれたお母さんの言葉は、余計に室井さんの中に響いていたのかもしれませんね。
しげちゃんシリーズ第2弾です。今度はおばあちゃんとのエピソードが語られています。天井の節目が目に見えるなど、子どものときならではのエピソードです。でも、最近はあんまり聞かないですよね、昭和の日本家屋あるあるでしょうか。さんざんおばあちゃんとジリツさんの掛け合いをして、一人寝の決心がついたのが、なんとも笑えるオチなのも必見です。
「しげちゃんとじりつさん」
- 作:室井滋
- 絵:長谷川義史
- 出版社:金の星社
- 発行:2016年
【脇役】おばあちゃん
絵本が楽しくなってきて、1年に1冊ペースで出版!
しげちゃん以降、室井さんは長谷川さんと毎年のように作品を出します。
ウリオ
イノシシ目線の物語ですが、なかなか身勝手な人間に振り回されてちょっと同情します。でも、それを吹き飛ばす長谷川さんの力強いウリオの絵で、逆境に負けない姿が元気になります。ウリオの飼い主として、父母とマー君、ももちゃんの兄弟が出てきます。
「ウリオ」
- 作:室井滋
- 絵:長谷川義史
- 出版社:世界文化社
- 発行:2013年
【脇役】マー君(男)、ももちゃん(女)、お父さん、お母さん、田中の爺さま
きらきらは・は・歯
歯磨きをきちんとするお隣のケントの家と比較して怠惰な山田家に、なかなか皮肉がきいてます。父・母・ヨシオとケント、保育園児のエリとヒカリ、さらにペットのポチとチェリーまで、とことん比較!歯磨きを知るだけでなく、その重要性に気づくまでのだめっぷりも、お話として楽しく読めます。
ハイソなお隣家族の踊る歌として、絵本ライブでおなじみの「アゴアゴワルツ」も登場します。
「きらきらは・は・歯」
- 作:室井滋
- 絵:長谷川義史
- 出版社:世界文化社
- 発行:2014年
【脇役】ケント、ヨシオの父,ケントの父、ヨシオの母、お隣のママ、エリ(妹)、ヒカリ(女)
チンチンボンボさん
「チンチンボンボ」とは、富山弁で「肩車」のこと。父の背中におんぶされるのが好きな甘えん坊の子のお話です。ついにはお尻に根っこが生えてきて…。というお話。
富山出身の室井さんならではのお話です。立山連峰やホタルイカの群れなど、富山らしいシーンも出てきます。あまりにも父さんから離れないので、女の子が「ちょっとだけかわってよ」といいます。それが男の子にとって、ほかの人と真剣に交流することになった初めての出来事かな?父さんから離れる自立の物語とも取れます。
「チンチンボンボさん」
- 作:室井滋
- 絵:長谷川義史
- 出版社:絵本館
- 発行:2015年
いとしの毛玉ちゃん
こちらは文だけでなく、絵も室井さんが参加されています。長谷川さんの絵だと、背景までビッシリ塗られているのですが、今回は白背景。文章も今までより多めで、死にそうな老婆も出てくるので、どちらかというと大人向けでしょうか。しかし、ブラジャーをつけた猫など、とてもユーモラスに描かれています。大人も子どもも心にしみるようなお話で、絵本ライブでも、涙を誘うとして定番の物語です。
「いとしの毛玉ちゃん」
- 作:室井滋
- 絵:長谷川義史
- 出版社:金の星社
- 発行:2016年
すきま地蔵
お地蔵さんは、町の隅っこにいても、みんなのことをよく知っていて、手助けをしようとしてくれています。でもビルに挟まってうごけない…。という、現代ならではの状況に、すこし切なさも感じる作品です。
「すきま地蔵」
- 作:室井滋
- 絵:長谷川義史
- 出版社:白泉社
- 発行:2017年
読み聞かせライブ「しげちゃん一座」結成へ
「しげちゃん」の出版後、室井さんの故郷・富山で長谷川さんが個展をする際に、「トークイベントをしませんか」と長谷川さんが声をかけたそう。そこから、せっかくやるなら面白いことを!ということで、長谷川さんの持ち歌や富山クイズを共にやったことが二人の活動の始まりです。
それがすごく楽しかった、と室井さんは言います。「女優の仕事では自分から出向いていくことはできないけど、絵本があれば日本全国の人たちに会いに行ける」、そういったところでこの頃、絵本の魅力に気づき始めていたようです。
その後、室井さんが大阪在住の長谷川さんにお芝居の方言指導をお願いに訪ねた時、その場に絵本や保育関係者がいたことで、「大阪でもライブを!」という流れになったそう。そこで、たまたまライブで大阪にきていたジャズプレイヤーの岡さんを面識のあった長谷川さんが呼び、ピアノもあったらいいね、と、共演経験のあった長谷川さんが、大友さんを呼びます。この時の高槻市で行ったライブが、4人が結成した最初になりました。
ライブは、とにかく4人そろうと楽しいという室井さん。ライブは年間30~40回もこなします。2016年には、「しげちゃん一座」によるCD「8つの宝箱」もリリースしました。
ライブでは絵本の読み聞かせのほか、歌ったりトークしたり…と、様々なことをします。実は練習はせず、即興で行うのだとか。それぞれがそれぞれの第一線で活躍してる4人だからこそできるワザですね!絵本だけでなく、「しげちゃん一座」の活動も注目です!
参考
kodomoe 「懐かしくてあたたかい、現代の人情絵本 『すきま地蔵』 室井滋さん×長谷川義史さん インタビュー 」 https://kodomoe.net/serial/interview/18776/
好書好日「 新刊は現代版「幸福の王子」 室井滋さん・長谷川義史さん「すきま地蔵」」https://book.asahi.com/article/11796754
mamasta select 「絵本トーク&ライブショーに親子で夢中に! 室井滋率いる謎の集団「しげちゃん一座」とは?」https://select.mamastar.jp/145695
CINRA net「歳をとるってどんなこと? 室井滋と長谷川義史が取り組む活動」https://www.cinra.net/interview/201611-shigechanichiza
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