なんだか怖そうな表紙の絵本「すてきな三にんぐみ」。読んでみると、意外といいお話でビックリしました。今回は、その絵本について紹介します。
すてきな三にんぐみとは?
フランス出身のトミー・アンゲラーさんが1961年に移住したアメリカで書き上げた作品。1969年に日本に紹介されました。原題は「The Three Robbers(3人の泥棒)」。日本を含む16カ国で翻訳され親しまれています。
「すてきな三にんぐみ」
- 作・絵:トミー・アンゲラー
- 訳:今江祥智
- 出版社:偕成社
- 発行:1969年
作者についてはこちらもあわせてどうぞ。
「すてきな三にんぐみ」のあらすじのネタバレ
あるところに黒いマントと黒い帽子にすっぽりと身を包んだ、3人組の盗賊がいました。
ラッパ銃と、こしょう吹掛け器と、大きなまさかりという3つの武器を持ち、毎晩どろぼうにでかけます。この3人組に会ったら最後。女性は気を失うし、男性も犬も逃げ出してしまいます。
そんなある夜。いつものように馬車を止めると、乗っていたのは孤児のティファニーちゃんだけでした。意地悪なおばさんの家に行くよりは、3人組のおじさんについていったほうが楽しそう、ティファニーちゃんは喜んでついていきました。奪う金品がなかったため、3人組はティファニーちゃんをアジトに帰ります。
翌日、目覚めたティファニーちゃんは、宝の山にビックリ。「一体これをどうするの?」
3人組は顔を見合わせました。使いみちについて考えたことがなかったのです。
3人組は捨て子やみなしごを引き取って、お城を買い、引っ越しました。その噂は国中に広まり、お城の子供は増える一方。子どもたちは赤い帽子に赤いマントを身につけるようになり、そのうち大きくなって結婚し、お城の周りは村になります。
みんなは素敵な三人組のことを忘れないために、三つの高い塔を建てたのでした。
というお話。
感想は?
この本はやはり表紙の印象で「怖そう…」から入る子がいるようです。我が子も、私が読むまでは手を伸ばそうとはしませんでした。
最後まで読むといい話で終わるのですが、レビューを見ると、「盗んだお金で人を救うのってやっぱり釈然としない」という意見も多いようです。しかしおおむねこの本の評価は良かったです。
我が子に読んだところ…
悪い人がいい人になった!
孤児って何?お城に住みたい。
…よくわからなかった。
…(絵を凝視)…
といった具合です。4歳児はちょっと難しかったようでした。意外だったのは2歳児。難しい話はいつも早々と離脱するのですが、これは絵が見やすいのか?じっくり見ていました。
ちなみに私は…
絵がデザインチックでスタイリッシュ。
しかし…盗んだ金品で人助けっていいの?
という最大の問題が気になりました。でも、子どもは特に指摘はしませんでした。
対象年齢は?
偕成社のホームページによると3歳から、本自体には4~5歳からの絵本とされています。
ちなみに我が子に読み聞かせた感覚では、理解できるのは5歳以上になってからと思います。
解釈は?
この作品は人によっていかようにもとることができます。
この本の最大のポイント「盗んだ金品で人助けってアリ?」という問題があります。これに関しては、それぞれの子が考える、ということで良いと思います。答えは永遠に出そうもありません。
その件を除くと、疑問は2つ。
ひとつ。何故3人組は、ティファニーちゃんと出会っただけで、善行にはしったのか?という疑問もわきます。ティファニーちゃんと3人の掛け合いはあまり詳しく描かれていません。でも、ひとつヒントがあります。それは、ティファニーちゃんがたださらわれたのではなく、「意地悪なおばさんのところよりは楽しそう!」と自らついてきた、と書いてあったことです。
個人的に、このくだりは「ミニオンズ」と似ているなあ…と思っています。大泥棒が孤児にあい、同情し、育てていくというものですね。この場合3人なのは孤児の方でしたが。ミニオンズの方がこの「すてきな3にんぐみ」を多少意識したのではないかな?と邪推しています。
そして二つ目。私が話のうえで最大に気になったのは、
物語の後半、孤児たちが黒ではなく赤を着たこと。
赤って話のなかでモチーフあったっけ?っと思いましたが、「赤いまさかり」ですね。でもまさかりと、引き取られた孤児たちに接点がない~~!
まさか共和制?とも思いましたが、そんなことを指摘している文献は見られません。これに関しては、ハッピーな色ということで黒に対して赤とみている人もいました。話の冒頭の強盗の部分は黒や紺が印象的なので、対比として赤にしたのかもしれません。
これも色々な解釈があると思います。このように、深読みできるのがこの作品の飽きないところなのでしょう。
英語版も日本で入手できる?
楽天
3,000円ほどするようですが、日本でも楽天・アマゾンなどで扱いがあります。
ただ、紙質が悪いというレビューも…?日本の絵本は紙質が最高なので、それと比べると仕方ないかもですね。
映像作品は?映画があるの?
世界各国でアニメ化されているようです。
2007年にドイツで長編アニメ映画化され、賞をとったりしているようですが、残念ながら日本に入ってきてはないようです。3人組がものすごく大柄だったみたいです。全編観てみたいですね。
ちなみに、「絵本ナビ」で月額360円のプレミアム会員に登録すると、見放題の「絵本ムービー」で観ることができます。「すてきな3にんぐみ」は約6分の作品です。
グッズは?
2019年頃はグラニフさんから、Tシャツが出ていました。現在はないようですが、とてもスッキリとしているデザインでした。
また再販されるといいですね!
すてきな三にんぐみまとめ!
とてもデザイン性の高い本で、ストーリーも大人になっても様々な解釈ができるので楽しめます。子どもの頃読んだ人が覚えていることも多いようで、大人になってまた子どもへ読み聞かせることができる、印象深い作品でした!
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