色んな媒体でオススメ絵本として挙げられる「おおきな木」。
わが子も私も読んだことがなかったので、今回改めて手にしてみました。割と大人向けの話かな?と思ったのですが、意外と3歳児もじっくり覗き込んでいました。
わが子の様子も含め紹介します。
「おおきな木」とは
「おおきな木」とはシェル・シルヴァスタインによる絵本。原題を”The Giving Tree(直訳:与える木)”といい、1964年にアメリカで出版されました。
日本では1976年に本田錦一郎氏訳によるものが篠崎書林より出版されていましたが、訳者が亡くなり継続して出版することができなくなったとのことのため、2010年に村上春樹氏訳のものがあすなろ書房より出版されました。
今回は村上版を中心に紹介します。
作者は誰?
作者のシェル・シルヴァスタインは、 1932年アメリカ生まれの作家、イラストレーター、シンガーソングライター。作詞を手掛けたジョニー・キャッシュのヒット曲「スーという名前の少年(A Boy Named Sue)」は1970年にグラミー賞を受賞しているなど多才な人物です。
「おおきな木」のあらすじは?
あるところに、一本の木がありました。その木は一人の少年のことが大好きでした。少年は毎日その木のもとへやってきて、色々と遊びました。
時間が流れ、少年は大きくなり、木は独りぼっちになることが多くなります。
ある日少年が木の下にやってきました。木は「いらっしゃい、ぼうや。私の木陰で遊んで、幸せにおなりなさい」と言いますが、「もう木登りをして遊ぶ年じゃないよ」と少年。「物を買って楽しみたいんだ、僕にお金をちょうだい」という少年に木は、「りんごを持っていきなさい、それを町でお売りなさい」といいます。少年は木の言う通りあるだけのりんごを運んで行き、木はそれで幸せになりました。
長い間姿を見ない日が続いた後、ある日少年はやってきました。木の遊びの誘いに「ぼくには温かく暮らせる家がいるんだ、ぼくに家をちょうだよ」といいます。木は「私の枝を切って、それで家を作ればいいわ」と言います。少年は枝を運んで行って家を作りました。木は幸せでした。
また長いときがあいたあと、少年がまた戻ってきました。木の遊びの誘いに「ぼくは遊ぶには年を取りすぎているし、心が悲しすぎる。ここじゃない遠くに運んでくれる船が欲しい。僕に船をおくれよ」と少年は言います。木は「私の幹を切って船を作りなさい」というと少年は幹を切り倒し、船を作って旅立ちました。
それで木は幸せに…なんてなれませんよね。
随分長い時間のあと少年はまた戻ってきました。木は「ごめんなさい、私にはもう何もないの。あなたにあげられるものが」というと、少年は「ぼくはもう、特に何も必要とはしない」と言いました。「腰を下ろして休める静かな場所があればいい」というと、木は「私にお座りなさい」というのでした。
対象年齢は?
篠崎書林の旧版のほうは「3歳から老人まで」とされていたようですが、村上春樹訳の新版は、特に目安は表記されていません。ただ、様々な絵本紹介の媒体では4~5歳からとされているものが多いようです。
ちなみにわが子の様子を考えると、3歳児は絵本の中身をじっと見つめていたものの、理解しているとまでは言えない気がします。5歳児は読んでやると何となくわかったようでした。しかしピンときてないようです。この内容をかみしめることができるのは、大人に近づいてからのような気もします。
感想は?
わが子の感想は以下。
…。木がそれでいいのならいいんだけど…。
大きくなっても「少年」だったね。
どんどん木が無くなっていってちょっと怖かった。
…(真剣)…。
といった具合。9歳にもなると、木が与えるばかりの側だったことがなんだか釈然としないようです。7歳は表現にも面白さを見出していて、おじさんになっても少年のままというところが気になったそう。
5歳児は、なんだかよくわかっていませんでしたが、画面の描き方が、登場人物の木や少年が見切れているという特徴的なものだったので、ページを開くごとに少年の姿を探したりしていました。3歳児は、いつもはこのくらいの長い本となると飽きてしまうのですが、今回はじっくり見ていました。白黒で見やすいからでしょうか?なかなか珍しい反応でした。
一方で私は…
人間って勝手よねえ…。それにしてもこの少年の人生は何があったんだろう…。
なんて色々邪推してしまいそうなものでした。大人になればなるほど、少年の背景が気になりますが、この本は「愛すること」と「与えること」の意味について、全年代に問う作品です。親子で話し合ういい機会にもなると思います!
英語の原著は?
こちらの本はシンプルな話なので、訳者によって微妙にニュアンスが変わってくるといいます。
話の佳境にさしかかった、船をつくるために幹を持っていくところの表現、村上春樹版では「それで木は幸せに…なんてなれませんよね。」となっています。本田錦一郎の訳では「だけど それは ほんとかな。」とあります。ここが原文では「but not really」。その他も、この木の一人称は「She」であったりと、日本語では見えにくくなってしまったシェル・シルヴァスタインの意図を直接に感じたいのであれば、英文版をオススメします。
「The Giving Tree」
- 作・絵:Shel Silverstein
- 出版社:HarperCollins; Re-issue版
- 発行:1964年
コメント